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弁護士 野中法律事務所 八王子:空き家の相続
空き家を相続するときには、どのような点に注意すべきでしょうか。
問題点と基本的な考え方を紹介します。
1.空き家の管理責任
家を所有する人は、家を管理する責任があります。
空き家を相続した人は、その空き家を管理する責任があります。
(1)家の管理を怠って、屋根が落下したり、庭木が倒れたりして隣人や通行人等にケガをさせた
場合には、損害賠償責任が発生します。
空き家やその植栽による損害が発生した場合には、所有者が無過失責任を負うことになります。
(民法717条)
(2)相続が発生し、誰が空き家を相続するか決まらない段階でも、管理責任があります。
(民法918条)
「相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理
しなければならない。
ただし、相続の承認又は放棄をしたときは、この限りでない。」
(3)相続放棄をした場合の管理責任
改正前の民法940条1項
相続の放棄をした者は、
・ その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、
・ 自己の財産におけるのと同一の注意をもって
・ その財産の管理を継続しなければならない。
* この規定については、相続放棄をした者の責任が不明確で重いことから、
令和3年に次のように改正され、令和5年(2023年)4月1日から施行されています。
改正後の民法940条1項 概要です
相続の放棄をした者は、
・ その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有する場合には、
・ 相続人又は相続財産の清算人に対して
・ 当該財産を引き渡すまでの間、
・ 自己の財産におけるのと同一の注意をもって
・ その財産を保存しなければならない。
2.税金について
(1) 固定資産税
・ 住宅用地については
課税標準となる評価額が軽減されています。住宅用地特例
小規模住宅 (200u以下の部分):6分の1に減額
一般住宅 (200uを超える部分):3分の1に減額
固定資産税についてご参照下さい。
* 空き家の建物を解体すると、この軽減措置が受けられなくなりますので、
解体する時期については要注意です。
* 下記の空家法に基づいて、市町村長が特定空家等の所有者に対し、
周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとることを 「勧告」 した場合は
この住宅用地の特例から除外されます。
(2) 譲渡所得税
・ 空き家を売却し、売却価格が取得価格+譲渡費用を上回る場合、
譲渡所得税が課税されます。
・ 3000万円の特別控除の制度 (2027年12月31日までの特例)
相続した日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに
売却するなど一定の要件を満たす場合には、3000万円の特別控除を
受けることができます。
* この控除を受けるには、いくつか要件がありますので、確認が必要です。
「空き家の譲渡所得の3000万円特別控除」を参照してください
3.空家等対策の推進に関する特別措置法について
空き家の増加に伴い、防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を
及ぼしています。
その問題に対処するために、空家法(略称)では、次のような点を定めています。
・ 空家等についての情報収集
・ 空家等及びその跡地の活用
・ 財政上の措置及び税制上の措置等
また特に下記の状態にある空き家を「特定空家等」として市町村に強い権限を付与しました。
市町村は、特定空家等に対して
・ 除却、修繕、立木竹の伐採等の措置の「助言又は指導」、「勧告」、「命令」が可能となり
・ 行政代執行の方法により強制執行(解体除去)が可能となりました。
「特定空家等」とは
@ 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
A 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
B 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
C その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
にある空家等をいいます。
更に「特定空家等」に至る前の下記の状態にある空き家を「管理不全空家等」として
指導を受けても改善されず勧告を受けた場合には、税負担の軽減特例が受けられなくなりました。
「管理不全空家等」とは
適切な管理が行われていないことにより、そのまま放置すれば特定空家等に該当する
おそれがある空家等とされています。
指導対象:適切な管理が行われていないことにより、そのまま放置すれば特定空家等に
該当するおそれのある状態
勧告対象:指導しても改善されず、そのまま放置すればそのまま放置すれば特定空家等に
該当するおそれが大きいる状態
4.空家等対策に関する市町村などの相談窓口について
空家法に対応して、各市町村などでは、空き家問題の対策を推進するため
空き家の発生予防、適正な管理、利活用、解消などの相談窓口を設置しています。
空き家の相続における管理や利活用などの相談は、自治体の窓口で相談することができます。
空家法の関連情報はこちらから
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