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弁護士 野中法律事務所 八王子:遺言執行者


 遺言を残すときに、遺言の内容を実現するために「遺言執行者」を
決めておくことがあります。基本的な考え方や概要を紹介します。

1. 遺言執行者とは


  遺言の内容を実現すること(遺言執行)を、職務として
  指定又は選任された者を遺言執行者といいます。


2. 遺言執行者はどのようにして決めるのか


(1) 遺言者が遺言で指定することができます。
  
 ア 遺言で特定の個人や法人を遺言執行者に指定できます。複数も可。

 イ 遺言で第三者に遺言執行者の指定を委託することもできます。

(2) 家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらうことができます。

  遺言執行者がいないときなどに、相続人や受遺者などの利害関係人が
  相続開始地の家庭裁判所に遺言執行者の選任申立てをします。
   

3.遺言執行者の制度が利用される具体例

 
 利用例としては例えば次のようなものがあります。 

(1) 遺言内容の実現が相続人では困難な場合 
    相続人が高齢などで自分で遺言の内容を実現することが難しい場合            

    共同相続人が多数で、協力的でない相続人がいる場合

    
(2) 遺言執行者でなければ遺言の内容を実現できない場合 
     遺言により認知する場合     

     遺言により相続人を相続廃除する場合


4.遺言執行者の地位と権限は


(1) 遺言執行者の行為の効果について次のように明確にされています。(民法1015条)

   「遺言執行者がその権限内において 
    遺言執行者であることを示してした行為は            
    相続人に対して直接にその効力を生ずる。」  

   * 改正前には、
    「遺言執行者は相続人の代理人とみなす。」とされていました。
      しかし、単純に相続人の代理人とみることには問題があり、改正されました。
             

(2) 遺言執行者の権限は次のように定められています。(民法1012条1項)   
   
   「遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他、
    遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。」
  

5.遺言執行者の職務、どのようなことをするのか。


(1) 具体的な執行の準備段階 
 ア 相続人に遺言の内容を通知します。(民法1007条2項) 
      ↑
    その前に誰が相続人なのか調査をする必要があります。

 イ 相続財産の目録を作成して、相続人に交付します。(民法1011条1項)
      ↑ 
    その前に相続財産にはどのようなものがあるか調査する必要があります。    
     
(2)具体的な遺言内容の実現 
 ア 不動産の遺言執行(名義移転)
    
  @ 特定の相続人に相続させる旨の遺言のとき  

   ・ その相続人(受益相続人)のみで登記手続きができます。

   ・ 遺言執行者も登記手続きができます。   

  A 第三者に遺贈する旨の遺言のとき 
    
   ・ 遺言執行者がいる場合は、遺言執行者のみが登記手続きができます。       
    (民法1012条2項) 


 イ 預貯金の遺言執行    

    特定の相続人に相続させる旨の遺言のとき 

   ・ その相続人のみで口座の解約、払い戻しができます。

   ・ 遺言執行者が口座の解約、払い戻しができます。(民法1014条3項)
     (解約の申入れができるのは、その預金口座の全部が遺言の目的であった場合。)

6. 注意点


 
・ 遺言執行者がいれば、相続人全員の協力がなくても手続きを進めることができるため、
 遺言者の意思をスムーズに実現することができます。

  相続人が多くても、皆さんの協力がえられる場合には、相続人が遺言執行者になって
 遺言の内容を実現することが可能です。
   ↓
  実際、相続人が遺言執行者になる場合は結構あります。


・ 他方で、共同相続人が多数で、疎遠な関係にあるような場合や、相続財産が多岐にわたり
 手続きが煩雑で専門家に任せたいと考える場合には、専門家の遺言執行者を指定することが
 望ましいでしょう。
   ↓
  専門家に遺言執行者を委任する場合には、報酬が発生しますので
 費用・報酬についても、予めよく相談しておくことが望ましいでしょう。

  なお、遺言執行者の報酬については、遺言で報酬を定めておくか、
 定めがないときは家庭裁判所で決めてもらうことができます。(民法1018条)

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