弁護士 野中法律事務所 八王子:カスハラ
顧客などからの過度なクレームや要求(カスタマーハラスメント、略してカスハラ)により
企業活動が阻害されたり、従業員が心身の不調に陥るということがあります。
・ カスハラとは、どのようなことを言いますか。
・ カスハラにはどのように対応すればよいのですか。
・ 企業はどのようなカスハラ対策をとる必要がありますか。
・ カスハラの定義:カスハラとはどんなことをいうのでしょうか。
企業・業界により、顧客等からの商品・サービスへの不当な要求についての
判断基準や対応方法が異なるため、明確な定義はできませんが、次のような
観点が考えられています。
@ 要求の内容が妥当性を欠いているかどうか。
A 要求を実現するための手段・態様が社会通念上相当かどうか。
厚労省のマニュアルでは、次のようなものとされています。
カスタマーハラスメントのマニュアル
「顧客からのクレーム・言動のうち、
当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、
当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当であって、
当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」
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・ カスハラにはどのように対応すればよいのですか。
(1) 要求内容の把握
(2) 対応策の検討・実行
(1) 要求内容の把握
顧客等の要求内容の妥当性を判断するために、
事案の内容:どういう商品・サービスの何が問題なのか
要求の内容:それに対して、どういうことを求めているのか
正確に把握する必要があります。
* 現場対応(対面・電話)での注意点
・できるだけ穏やかに話を聴く。
要求が妥当な内容である可能性があります。
顧客等は、自分の方が妥当であると思いこんでいる場合もあります。
・要点を確認しながら、記録を残します。
録音、録画が望ましい場合もあります。
・不明な点については、即答を避けます。
・時間が長時間にわたりそうな場合は、時間を限定して打ち切ります。
面談や電話の打ち切り方についても、対応マニュアルを用意しておきます。
・対面では複数対応が望ましい場合があります。
威圧的な言動、執拗な言動、揚げ足取り的な言動、居座りなどの場合には
二人以上での対応が 望まれます。
(2) 対応策の検討・実行
・問題とされている内容と要求内容が明確になったら、それに対して
どのように対応するか決めることになります。
ア 内容・状況が明確になっていない段階
不快感を抱かせたという点に限定して謝罪するに止める。
イ 内容・状況が明確になったら
非がある場合には、その非・過失の程度に応じた謝罪・対応を決定する。
例えば
商品の返還・交換に応じる。
金銭での補償・賠償に応じる。
・ 対応の決定方針の顧客への説明方法についても、
面談・書面・メールなど状況に応じて最適な方法をとります。
* カスハラが悪質で犯罪行為に該当する次のような場合には、
警察に相談して、被害届を出すなどの対応を検討します。
【罪名】 : 【具体的言動】
暴行、傷害 : 暴力行為で従業員が負傷した。
器物損壊 : 商品を傷つけたり、破損した。
威力業務妨害 : 暴言・暴行などで業務を妨害した。
恐喝・脅迫・強要:金銭や不当な要求をした。
不退去 : 退去要請を受けても退去しない
名誉棄損、侮辱、信用棄損 : 侮辱的な発言や誤解され信用を毀損する情報発信をした。
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・ 企業はどのようなカスハラ対策をとる必要がありますか。
1 カスハラに対する方針、カスハラの判断基準を明確にします。
・ 企業として、カスハラに対して、不当な要求には毅然として
対応することを明確に示します。
・ どのような言動がカスハラに該当するのか、企業ごとに
判断基準を明確にします。
2 カスハラに対する対応方法・手順を作成し、対応組織を準備します。
・ 類型的なカスハラ行為ごとに、対応方法を決め、マニュアルを作ります。
現場対応では解決・判断できない場合の対応組織を準備しておきます。
例 顧客対応をした従業員
↓ 報告・相談
現場監督者または相談窓口
↓ 報告・相談
本社・本部へ情報共有を行い、助言・指示を仰ぐ
3 従業員にカスハラ対策を周知・教育します。
顧客等からの迷惑行為、悪質クレームへの対応について従業員を教育します。
4 カスハラ被害にあった従業員をフォローします。
担当した従業員に対する配慮の措置を適切に行います。
複数名での対応、組織的な対応をします。
メンタル不調に陥った従業員に対して適切な相談・対応をします。
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厚労省のカスハラ対応マニュアルを参照してください。
カスタマーハラスメントのマニュアル