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弁護士 野中法律事務所 八王子:交通事故
もしも交通事故に巻き込まれた場合に、基礎的な法律知識がないと不利な条件での
解決を迫られることがあります。
基本的な法律知識の概要・よくある質問を紹介します。
・
交通事故の当事者になってしまったとき、 まずどうしたらいいのでしょうか。
治療継続中
・
交通事故で負傷した場合、健康保険など社会保険を使えるでしょうか
・
示談交渉がまとまるまでの生活費の確保のために、どのような方法があるでしょうか。
・
治療継続中に、保険会社から治療費を打ち切ると言われたら、どうしたよいでしょうか。
・
加害者側が任意保険に加入していない場合、どうしたらよいでしょうか。
・
仕事中の事故で加害者側が任意保険に加入していない場合、自賠責保険と労災保険の
どちらを使えばよいでしょうか。
治療終了、症状固定後
・
保険会社から、示談金額の提示があった場合、どのように対応したらよいでしょうか。
・
示談交渉がうまくいかないときの、損害賠償請求の方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
民法改正による変更点
・
民法改正(2020年4月1日施行)により、交通事故の損害賠償はどのように変わりますか。
1. 交通事故の当事者になってしまったとき、
まずどうしたらいいのでしょうか。
(1) 事故を起こした場合、道路交通法上、次の義務があります。
@ 負傷者を救護する
A 道路上の危険防止措置をとる
B 事故の発生した日時、場所、負傷者数や程度を警察官に報告する
*注意:物損事故でも、後になって傷害が発生する可能性もありますので
警察へ届け出て「交通事故証明書」を入手できるようにしておくことです。
報告を怠った場合は、保険(賠償)金請求に必要な「交通事故証明書」が
取れなくなります。
(2) 事故の相手方が誰なのか確認します。
今後の賠償請求などの交渉相手・当事者になりますから、次のことを
確認します。
ア 住所・氏名
イ 年齢・職業
ウ 車の番号・所有者
エ 契約保険会社
(3) 負傷の程度を確認します。
軽そうに見える負傷の場合でも、勝手に自分で判断せずに、必ず医師の診断を
受けた方が良いです。特に頭部の場合は必要です。
そして、「診断書」をもらっておくことが必要です。
(4) 事故状況を確認します。
現場の状況
車両及び人の多さ
天候
* 写真を撮ることができれば、写真を撮っておきます。
* 目撃者がいれば、その方の住所・氏名・連絡先等を確認し、後日必要なときは
証言してくれるよう頼んでおくとよいでしょう。
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2.交通事故で負傷した場合、健康保険など
社会保険を使えるでしょうか
結論:交通事故による負傷の場合でも健康保険を使うことはできます。
*このことは、厚労省でも通達を出しているところです。
交通事故のように第三者の行為によって負傷した場合には、被害者の治療費は、
加害者が負担すべきものですが、被害者は公的医療保険を使って治療を受けられます。
その治療費は、被害者が加入する保険制度が負担するということではありません。
加害者が支払うべき治療費を、保険制度がいったん立て替えて病院に支払い、
後に加害者に請求することになるのです。
但し、健康保険を使って治療を受けるには、第三者の行為による傷病である
届出書面を提出することが必要です。
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3.示談交渉がまとまるまでの生活費の確保のために、
どのような方法があるでしょうか。
・ 自賠責保険の仮渡金制度
被害者は、損害賠償責任または損害額が未確定の段階で、治療費などの当座の出費にあてるために
保険会社に、仮渡金の請求をすることができます。
自動車事故では、損害賠償責任または損害額の確定には相当期間がかかるため、当座費用について
損害賠償金の一部を先渡しすることで、被害者の早期救済を図ろうとする制度です。
仮渡金額については自賠法施行令で一定額に定められています。
11日以上の医師の治療を受けた場合に認められています。
・ 保険の内払い制度
加害者に賠償責任があると認められ、既に発生した損害額が10万円以上あることが
確認された場合には、相手方の保険会社に内払金の請求ができます。
これは仮渡金のような法令上の制度ではなく、保険会社の独自のサービス業務です。
・ 勤務中・通勤中の交通事故の場合における、労災保険による休業補償
仕事中や通勤途中での交通事故の場合、労災保険が適用されます。
労災保険の休業補償給付:休業4日目から休業1日につき給付基礎日額の60%相当額
休業特別支給金が同じく 給付基礎日額の20%相当額
労災保険給付については、こちらを参考にしてください。
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4.治療継続中に、保険会社から治療費を打ち切ると
言われたら、どうしたよいでしょうか。
まだ痛みがあったりして治療を継続しているのに、保険会社から一方的に
治療費の支払いの打ち切りを告げられることがあります。
その背景には、保険会社としても、早期に示談をまとめ、支払いを最小限に抑えたいなど
の理由があります。
打ち切りを判断される状況としては、次のようなことがあります。
・ 30日以上通院の履歴がない。
・ 通院の頻度が少ない。
・ 事故状況が軽微である。
・ 他覚所見(視診・触診・画像診断等によって医師が症状の裏付け可能なもの)がない。
*交通事故の治療費の場合、打撲は1ヶ月、むち打ちは3ヶ月、骨折は6ヶ月を
過ぎたころを目安に、保険会社から、治療費の打ち切り、症状固定とされることがあります。
<症状固定とは:それ以上治療を続けてもケガの状態がよくならない状態のことです。>
治療を続けてもそれ以上の回復を見込めないかどうかは、主治医が判断することで、
保険会社が決めることではありません。
治療を継続すれば、さらに回復する可能性があるのであれば、治療は続けるべきでしょう。
(1) 治療費打ち切りに対する対処法
まず、打ち切られないよう治療の必要性を主張し、交渉する。
@ 治療は継続する。
痛みなどの症状があり、治療を必要とするなら、通院・治療を継続します。
治療の必要性を判断するのは、あくまでも医師です。
他覚所見がある場合は、治療の必要性が明確になります。
A 主治医に診断書を書いてもらう。
主治医に治療継続の必要性を確認し、診断書を作成してもらい、保険会社に提出します。
診断書は客観的な証拠になりますので、保険会社に治療の必要性を
理解してもらいやすくなります。
治療の必要性が認められないということで、治療費が打ち切られた場合
@ ご自身の自動車保険に人身傷害補償特約が付保されている場合、その特約で治療費を
支払ってもらう。
・ 特約を使っても自動車保険の等級が下がることはありませんが、加入している
保険会社に相談してみてください。
A 健康保険を利用して治療を継続する。
・ 治療継続の必要があれば、健康保険を使って、自費で入通院を続けることをお勧めします。
・ 交通事故の場合でも、自分が加入している保険組合に「第三者行為による傷病届」を
出すことで、健康保険を使えます。
(2) 治療費を打ち切られた後にも、必要性があって治療を継続した場合
・ 治療と事故との因果関係(相当因果関係)と治療の必要性が認められれば、
・ 自己負担部分の治療費を加害者(保険会社)に請求することが可能です。
・ 入通院慰謝料を増額できる可能性があります。
入通院の日数に応じて算定されるからです。
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.加害者側が任意保険に加入していない場合
どのように対応したらよいでしょうか
@ 自賠責保険で対応する。
自賠責保険は、強制保険ともいわれるように、車検の際に加入が義務付けられています。
自賠責保険は、被害者救済の制度趣旨から、被害者に重過失がない限り減額されません。
傷害の場合の限度額は120万円です。
これは、治療費・休業損害・慰謝料などの損害を合わせて120万円までです。
従って、治療費が高額になると慰謝料等が制限されることになります。
<自賠責保険適用のメリット>
・被害者に重過失(7割以上)がなければ、限度額までは減額されません。
・自賠責保険会社に対して、被害者が直接損害賠償請求(直接請求)できます。
・損害額の確定前でも仮渡金の支払を受けられます。
A 健康保険で対応する。
交通事故によるケガについても健康保険が使えます。
「第三者行為による傷病届」を自分が加入している保険組合に提出します。
<健康保険適用のメリット>
・ 治療費が低額に抑えられます。
治療費を低額に抑えることで、自賠責保険(限度120万円)を治療費以外の
損害(休業損害・慰謝料等)に充てることができます。
・被害者の過失が大きい場合でも損害額が抑えられます。
B 労災保険で対応する。
被害者が、雇い主の業務に従事中または通勤途中に交通事故にあった場合には
労災保険の適用になります。
労働基準監督署に「第三者行為による災害届」を提出します。
<労災保険適用のメリット>
・治療費の全額が労災保険の適用となり、被害者の負担はありません。
・被害者の過失割合による負担はなく、長期治療も適用されます。
* 後遺障害の等級認定は、自賠責保険の書類審査と異なり、
顧問委が診断して認定します。
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・仕事中の事故で加害者側が任意保険に加入していない場合、自賠責保険と労災保険の
どちらを使えばよいでしょうか。
結論:どちらを先に使うかについては、自由です。
自賠責保険の給付を先に受けるか、労災保険の給付を先に受けるかは、
自由に選択できます。
・ 自賠責保険の給付と労災保険の給付との間では、損害に対する二重の填補に
ならないように支給調整が行われます。
(1) 自賠責保険からの保険金を先に受けた場合(「自賠先行」)
自賠責保険から受けた保険金のうち、同一の事由によるものについては
労災保険給付から控除されます。
(2) 労災保険給付を先に受けた場合(「労災先行」)
同一の事由によるものについては自賠責保険からの支給は受けられません。
・自賠責保険と労災保険とでは、その給付内容が異なっているため、その違いを
よく検討したうえで、選択するのがよいと思います。
両保険の給付内容の比較についてはこちらを参考にしてください。
自賠責保険のメリット
・仮渡金制度があります。
・慰謝料が支払われます。
・休業損害は100%
自賠責保険のデメリット
・傷害による損害額の合計の上限が120万円です。
・被害者に重過失(70%〜100%未満)がある場合、過失相殺があります。
・被害者としては、重過失がない場合には、先に自賠責保険から保険金を受け取り、損害額が
120万円を超えた場合に、労災保険の給付を受けるのがメリットがあるとされています。
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5.保険会社から、示談金額の提示があった場合、
どのように対応したらよいでしょうか
(1) 交通事故の損害賠償の基準には3つあると言われています。
@ 自賠責保険の基準
A 任意保険の基準
B 裁判所・弁護士の基準
@ 自賠責保険の基準
自賠責保険とは
ア 自賠法に基づいて、
イ 自動車の運行による人身事故の被害者を救済するために
ウ 全ての自動車について契約することが義務付けられている強制保険です。
* この保険は、被害者保護の立場から社会保障制度的な要素が強く
最低限度の補償を行う趣旨ですので、金額は低くなります。
A 任意保険の基準
任意保険とは
ア 車の所有者が、自分の判断で保険会社と契約する保険です。
イ 人身事故で損害額が、自賠責保険の限度額を超えた場合、その超えた部分は
加害者が負担しなければなりません。
任意保険は、自賠責保険の保険金を上積みする保険です。
また、車両の破損や自損事故の場合には、自賠責保険では補償されません。
任意保険では、各種の補償を付けることができます。
* 人身事故の場合、自賠責保険(強制保険)の限度額を超えることは
しばしばありますので、任意保険に加入することが必要でしょう。
任意保険の支払い基準は、各保険会社が決定しています。
B 裁判所・弁護士の基準
裁判所・弁護士の基準とは
交通事故に関する多くの裁判例の積み重ねに基づいて
妥当な損害額の目安が形成されてきました。
これらの裁判例を(財)日弁連交通事故相談センターが調査・分析・公表したものです。
* 裁判所基準は、あくまで目安ですが、示談交渉で保険会社から提示される金額より
高い水準にあります。
(2) 裁判所の基準による場合が、通常最も高額の賠償額となりますので、
保険会社と示談交渉する場合には、この基準に基づいて行うことを
お勧めします。
弁護士が代理人として保険会社と示談交渉する場合にも、裁判所の基準
に基づいて行いますので、自分で交渉することが難しい方は弁護士に
相談することをお勧めします。
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6 示談交渉がうまくいかないときの、損害賠償請求の方法には
どのようなものがあるのでしょうか。
示談交渉がうまくいかず決裂してしまった場合、裁判所での調停や訴訟などの
法的手続きに移行することが多いと思われます。
それ以外にも裁判所外の紛争処理手続き(ADR)があります。
以下のADRの担当者は、交通事故の案件に精通した弁護士であり、適切な解決が
期待できます。
加害者側に任意保険が付保されている場合には、保険会社側のみを拘束する判断を
示すことができる場合もあり、迅速・安価な解決ができることがあります。
注意点
・数回程度の期日での紛争解決を想定しているため、対象となる紛争が限定されています。
症状が固定し、後遺障害認定がなされ、異議がない場合で、
過失割合にも争いがない場合などの利用に適しています。
・訴訟の提起と異なり、時効の中断にはなりません。
(1) 公益財団法人 日弁連交通事故相談センター
組織:【本部】理事会・評議委員会
【全国の拠点】全都道府県に相談窓口があり、本部と支部、相談所があります。
対象となる紛争
自賠責保険又は自賠責共済に加入することを義務づけられている車両(自動車・二輪車)
の交通事故事案です。
費用:無料
特色
1 相談内容の範囲
交通事故発生初期から事故解決までの損害賠償問題を対象としています。
例えば、事故直後や治療中であっても面接相談・電話相談を受けています。
2 示談斡旋
面接相談を受けた弁護士が、示談斡旋に適すると判断した場合に、示談斡旋の
申込み手続きをします。
3 審査
示談斡旋が不調となった場合、同センターと協定を締結している共済組合が
相手側の場合、審査を申立てることができます。
(2) 公益財団法人 交通事故紛争処理センター
(3) 弁護士会の仲裁センター
民法改正(2020年4月1日施行)により、交通事故の損害賠償は
どのように変わりますか。
1 損害賠償請求権の権利行使の期間が変わります。
人身損害について
ア 短期の消滅時効期間:損害および加害者を知った時から
3年だったものを
↓
5年に延長しました。(724条の2)
* 物損については、3年のままです。(724条)
イ 長期の消滅時効期間:権利を行使することができる時から
20年:時効期間であることを明記 (724条)
* 適用関係
・事故発生が施行日(2020年4月1日)より前の場合で
↓
3年の時効が完成していない場合は5年になります。
事故から20年経過していない場合、時効期間として扱われます。
* 保険金請求権や自賠法16条1項の請求権は3年のまま変わりません。
* 損害賠償についての協議を行う旨の合意が書面でなされたときには
時効の完成が猶予されます。(151条)
猶予されるのは、次のいずれか早い時までです。
@ 合意があった時から1年を経過したとき
A 協議を行う期間(1年未満)を定めたときはその期間を経過したとき
B 協議続行を拒絶する通知から6ヶ月経過したとき
2 法定利率が変わります。
5%だったものを
↓
3%に下げました。
さらに、今後3年ごとに利率を見直すことになります。(404条)
ア これにより、逸失利益の計算などで中間利息の控除(417条2)に使用する係数が
変わり、控除される金額が変わります。
そのため
・ 死亡事故の場合の逸失利益
・ 後遺症が発生した場合の逸失利益
などにおいては、中間利息の控除額が減るため、賠償額が増額されることになります。
イ 遅延損害金は、減少することになります。
*適用関係
事故発生時の法定利率が適用されます。
3 物損の場合に相殺が認められます。(509条)
不法行為による損害賠償義務を負っている債務者が、別の債権でその債務と
相殺することは禁止されていました。
その理由は、次のようなものです。
・ 不法行為の誘発を防止する。
・ 現実の弁償により被害者を保護する。
そこで ↓
物損の場合で、「悪意」がないような場合には、
不法行為債権を受働債権とする相殺が認められるようになりました。
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