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弁護士 野中法律事務所 八王子:私道の通行
私道の通行をめぐるトラブルについて、
基本的な考え方や判例の概要を紹介します。
1. 基本的な考え方
@ 私道は、私人の所有する土地を通行の用に供しているものですから、
↓
第三者が私道を通行するには、私法上通行する権利が必要です。
A 私法上の通行権をもたない第三者が私道を通行しているのは、事実上のことであり、
↓
私道所有者によって通行を拒否されることがあってもやむを得ないところです。
2.私道を通行する権利には、どのようなものがあるのでしょうか。
@ 公道に至るための他の土地の通行権(囲繞地通行権):民法210〜213条
いわゆる袋地の所有者が、公道まで通行するために認められています。
A 通行地役権:民法280条
自分の土地(要役地)の便益のために、他人の土地(承役地)を利用する権利で、
地役権設定契約(明示・黙示)や時効により取得されることが殆どです。
黙示の通行地役権の設定が認められるには、次のような客観的事情が必要です。
ア 長期間の通行の継続
イ 通路敷所有者の黙認や通行を認める合意・言明
ウ 客観的合理性(例えば、分譲時における通路開設、通路敷所有権を元の
分譲者に留保した場合など)
B 賃貸借、使用貸借等の契約による通行権:民法601、593条
対象土地を通行目的で使用するために貸借する債権契約による通行権です。
C 慣習上の通行権
長年による通行により慣習上の権利として保護される場合が考えられます。
3 通行の自由とは、どのようなものでしょうか。
@ 私道でも、建築基準法上の道路(同法42条1項5号の位置指定道路、同2項みなし道路)
については、
↓
私道内の建築は制限され(同法44条)、
私道の廃止、変更が制限されます(同法45条)。
(これは、交通の確保、防災活動や災害避難に備える公法上の目的によるものです。)
↓
そのため、第三者もその私道を通行することに支障がなくなります。
このように第三者が私道を通行することを通行の自由といいます。
(公益目的による制限に伴うもので反射的利益といいます。)
A
最高裁第1小法廷判決:平成9年12月18日は次のように判断しています。
建築基準法42条1項5号の規定による位置の指定を受け、
現実に開設されている道路を通行することについて
日常生活上不可欠の利益を有する者は、
↓
敷地所有者が通行を受忍することによって
通行者の通行利益を上回る著しい損害を被る
などの特段の事情のない限り、
敷地所有者に対して妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利
(人格的権利)を有する。
4 登記簿の地目が「公衆用道路」となっている私道の通行について
・「公衆用道路」という言い方は、登記上の地目として目にします。
・ 通常私道というのは、その土地の道路としての使用形態に着目していわれますが、
登記簿上では、その土地の地目が「宅地」や「畑」「田」などになっていることがあります。
↓
所有地を「一般交通の用に供する道路」として登記地目を「公衆用道路」に
変更することができます。
・「公衆用道路」については、市町村で公衆用道路の認定を受けることで
固定資産税・都市計画税・不動産取得税が非課税になることがあります。
通行については
地目が「公衆用道路」となっている私道の通行についても、前記1〜3と同じであり、
当然通行できるわけではなく、私法上の通行権が求められます。
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