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弁護士 野中法律事務所 八王子:相続分の放棄


 相続に際して、自分の相続分を放棄することがあります。
基本的な考え方や利用方法の概要を紹介します。

1. 相続分の放棄とは


 自分が相続により取得する持分(相続分)を放棄することです。

@ 放棄するのは相続財産の包括的持分であり、個別の財産ではありません。

A 相続分の放棄は、「相続放棄」と異なり、相続人の地位は維持したままで
  自己の相続分のみを放棄する単独行為です。   
                      

2.相続分の放棄が利用される具体例

 
 利用例としては例えば次のようなものがあります。 

(1) 相続をめぐる問題・トラブルに関わりたくない場合。 
   相続分を放棄すると、遺産分割協議に参加する必要がなくなります。            

(2) 相続人が被相続人と縁遠かったなどの理由で、相続財産の取得を希望しない場合。 

 * 相続分の譲渡は、特定の相続人に相続分を譲渡したい場合に用いられますが、
   相続分の放棄は、そのような意向がない場合に用いられます。

(3) 共同相続人が大勢いる場合、相続分の放棄をして人数を少なくして、
  遺産分割協議をやりやすくする場合。

3.相続分の放棄をすると、どのようになるのか。


 相続分の放棄は、放棄の時に効力を生じます。
  ↓↑           
 遺産分割は、効力が相続の時に遡ります。 

(1) 相続分の放棄をした人の地位
   ・ 遺産分割手続きに関与できないことになります。
   ・ 債務は承継します。(この点、相続放棄と異なります。)

(2) 相続分の変動
   ・原則:放棄者の相続分は、共有持分の放棄を定めた民法255条を類推適用して
    他の共同相続人の各自の相続分の割合に従って分配されます。

   * 代襲相続などで、相続人がいくつかのグループに分かれるような場合 
    グループ内で相続放棄と同様に放棄者が最初から相続人にならなかったと解して     
    処理することがあります。
     事案に応じて、当事者の意向を確認して相続分の帰属方法を協議して決める
    ことがあります。  

4.相続放棄との違い、どのように使い分けるか。


 相続分の放棄と相続放棄のどちらによっても遺産分割協議手続きから離脱することができます。
 次のような違いがあります。

(1) 相続債務の承継   
 ア 相続放棄では、相続人ではなくなりますから、相続債務から免れます。 
   
 イ 相続分の放棄では、債権者との関係では、相続債務を免れることはできません。
  
(2) 期間制限  
 ア 相続放棄は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から   
  3か月以内に、家庭裁判所での手続きが必要です。
  
 イ 相続分の放棄は、相続開始後から遺産分割が成立するまでの間、いつでもできます。

5.相続分の放棄の方法

  
(1) 相続分の放棄には、法律上特別な方式はありません。  
   
   実務では、放棄が本人の意思であることを明確にするため、本人の署名、実印の押印
  印鑑証明の添付を求めています。
 
(2) 家庭裁判所では、相続分の放棄に関する一連の書式を用意しています。 

  ・ 京都家庭裁判所のホームページが参考になります。
「相続分放棄について(説明書)」  

6.相続分の放棄の注意点


   放棄者としては、相続分を放棄することにより、遺産分割手続きから離脱できますが、   
   債権者との関係では、債務を免れることはできません。
     ↓
    被相続人に負債がある場合は、他の共同相続人がきちんと返済してくれるか
    慎重に判断する必要があります。    

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